04/21/2014 6:20 AM ·Spoilers
…何だ。 変な感じだ。 何か、懐かしい感じがする。 …「…ねえ、まだ…まださ。お互いの…は言わないように…よう。だって!その方がさ…君と、僕が、また…った時に…君が僕を、僕が君を…お互いを…だからさ、また…きっと…!…」 …何て言ってんだ。 …聞こえない…
04/21/2014 6:25 AM ·Spoilers
「…ん」 ああ、夢か。…あの夢だ。 久しぶりに見たな。 懐かしいな。何だったか。 ああ、もういいか。 今は夢なんてもう…いらないんだよな。 「さ、今日も回るか」ただいつも同じように過ぎる時間。いつもの日常だ。いつもいつも。多分、死ぬまでそうなのかもしれない。それが、俺の生き方だ。…これが正しいとかは思わない。ただ、変化なんてないのだ。あの時から、もう、何も…
04/21/2014 6:28 AM ·Spoilers
…背筋が急にぞくっ、とした。自分で思っていたことなのに酷く体がこわばった。…でも、それは本当にそうだ。現に今だって変わらぬ日常なのだ。 …そう、この時の俺は呑気にそんな考え事をしていたのだ、恥ずかしいことに。『変わらぬ日常』なんてものがぶち壊されることが、今日この日、起きてしまったのだから。
04/21/2014 6:35 AM ·Spoilers
「あ~…やっぱ森の空気は美味いな」 一人そんなことを言いながら森の中を抜ける。というかこの森には本当に俺しかいないので別に一人などと特筆することもないが。俺の日課は森の見回り。というかそもそもこの森に住んでる奴なんていないからトラブルなんて起きないから正しく言うと散歩に行ってるようなもんだ。まあ今日も、何事もなく散歩を終え、昼寝して、飯食って、寝るのだろう。
04/21/2014 7:44 AM ·Spoilers
…などと思っていた矢先、ブゥゥゥゥン…という音とともにガサガサと、騒がしい音がし始めた。…なんだ?ここらにはポケモンはいないはずなんだが…もしかして迷ったのか?ここの森は深いからうっかり足を踏み入れるとすぐ迷ってしまうからな…と思っていたらさらに音が大きくなり始めた。
04/21/2014 7:53 AM ·Spoilers
音だけ聞くとどうも道に迷ったやつの足音ではない。凄い勢いで走っているような足音だ。これは何かあったのだろう、まず考えるより様子を見るのが先だ。急いで俺は音のする方向へ足を速めた。 足音のする方へ行くと、さっきのブゥゥゥゥンという音が何の音かがすぐに分かった。そこには1匹のピカチュウと複数のスピアー達、そして木から包囲するコクーンの姿があった。
04/21/2014 7:58 AM ·Spoilers
さっきのブゥゥゥンという音とともにガサガサと音が聞こえだしたのは、多分スピアー達があのピカチュウを追ってこっちに来た音なのだろう。そしてあの凄い勢いで走る足音はピカチュウがスピアー達から逃げていた足音だったということか。ここで全ての合点がいった、が… …俺が出てきて何をするというのだ…別に戦いが出来ないというわけではない。
04/21/2014 8:02 AM ·Spoilers
が、俺はここの森で数年自給自足して過ごしてきたため、人と会うこと自体、いや、俺以外の人を見ること自体が久しぶりすぎてどう出るかが分からなかった。ああ、なんでこんな時に限って俺は役に立たないのだ。こんなことならせめて町にでも出て誰かとコミュニケーションを取っておくべきだった。馬鹿か。馬鹿なのか俺は。…そんなことを考えていると、喋り声が聞こえてきた。
04/21/2014 8:08 AM ·Spoilers
「なんだなんだ?お前が俺らに挑発してきたくせにのこのこ逃げやがってよお…俺らの住処から随分離れちまって…こんな深い森に入って俺らが見失うとでも思ったのか?あ?」…スピアー達の中のリーダー格のような目つきの悪いスピアーが腹立たしいと言わんばかりにそうピカチュウに告げた。「ふん。あんたらの方が馬鹿じゃないの?あたしが無計画にこんな深い森入るわけないでしょ」ピカチュウの方は凄く高圧的にそう言い放った。
04/21/2014 8:16 AM ·Spoilers
「ここに逃げてきた…っていうよりあんたらをここにおびき寄せたのは、あんたらの住処の森よりここの方が十分見渡せるし、何より私たちがいるここは特に広場のようになっているのよ。よりあんたらを倒しやすくなったって訳よ」ピカチュウが続けて言った。確かにここの森は全体的に見渡せて日が入っていて明るい。
04/21/2014 8:20 AM ·Spoilers
特にピカチュウたちがいる所はフィールドのようになっていて、さっきのピカチュウの言い方で言うと広場のようになっていて戦いやすいのは明確だろう。ただここで俺が疑問に思ったのはなんであのピカチュウ、ここの森の地理が分かるんだ?それだけがよく分からなかった。そう思っていると、「ああ!?まさかお前俺らに勝てるとでも思ってんのか!?場所が変わろうとお前の悪巧みは通用しねえよ!」とスピアーが言い放った。
04/21/2014 8:27 AM ·Spoilers
でも確かに戦いやすいとはいえスピアー達と木から完全包囲しているコクーンたちの数をざっと数えても結構な数がいる。それをあのピカチュウ一人でやるのは難しいだろう。一体あのピカチュウは何を考えているんだ?どうもあのピカチュウが無謀にスピアー達に突っ込むとも思えない。一体…そう思った時、ピカチュウが「言っとくけどあたし、弱くはないから」そう一言告げた次の瞬間、目を疑うようなことが起こった。
04/21/2014 8:32 AM ·Spoilers
ピカチュウが手で電撃を放った瞬間、何もない、空気中から電気が走りスピアー達に一斉に電気が通った。木から包囲していたコクーンたちにも感電していた。何が起こったんだ。それを自分の頭で処理することは全く出来なかった。あのピカチュウは手と電気の頬袋から微量の電気しか出していないというのに、急にスピアー達に電気が通っているのだ。理解など不可能だった。
04/21/2014 8:38 AM ·Spoilers
あのピカチュウが大技を使ったとも思えない。どうして…「…ふん。ったく…俺以外全員くたばりやがって。でも面白い、今の技はなんだ?お前がそんなすげえ技使うとは思っていなかったな、油断しちまったな」驚いた。あのリーダー格のスピアーだけ無傷でピンピンとしていて立っていたのだ。「流石、ってとこかしら?お尋ね者の☆7っていうのはだてじゃないわね」ピカチュウがそう言った。お尋ね者…?なんだ?
04/21/2014 8:43 AM ·Spoilers
「褒めてくれてありがとよ。でももうそんな礼言えなくなるほど俺がズタズタにしてやる」スピアーが妖気を放つような禍々しい顔でそう言った。「…あの技かわされるとは思ってなかったわね…まあ別にいいけどね。ああ、あとあんたにはズタズタにされない自信はあるわよ」ピカチュウがすっぱりとそう言い切った。もう何が起こってるんだ。
04/21/2014 8:48 AM ·Spoilers
「あの技、あれだろ?静電気と同じ事だ。空気中に静電気を発生させるようにお前が適量の電気を空気中に流したことで静電気…というよりもっとでかい電気が起こってそれで俺らを感電させたんだ」…頭がこんがらがったが、落ち着いて考えるとスピアーの言葉が分かってきた。
04/21/2014 9:17 AM ·Spoilers
「ご名答よ。適量の電気を出して空気が反応し感電させる。この技を私は「電圧大気」そう呼んでるわ。」ピカチュウがそう言った。成程、あのピカチュウが出した微量の電気が感電させる適量の電気だったのか。…いや、でも一つ引っかかる。空気が反応して感電するのなら、あのスピアーはなぜ立っているのだ。おかしいじゃないか。
04/21/2014 9:26 AM ·Spoilers
電気が来ると予測して逃げようとしても、俺もそうだ、あのスピアーも空気に触れているのだ。「ねえ、一ついい?あんたどうやってあたしの攻撃避けたの?」ちょうどピカチュウが俺と同じ疑問を投げかけた。「生きている中で空気はどこでも存在している。だから見えないだけで私たちはずっと空気に触れている。「電圧大気」は適量の電気を出して空気が反応して空気に触れている、電気が通る物なら私の近くの範囲は全て感電するの」
04/21/2014 9:31 AM ·Spoilers
「ならあんたはほぼ100パーの確率で避けきれないはずよ。どうしたの?」ピカチュウが冷静に問いただした。すると「簡単なこった。お前の攻撃の原理が分かってすぐ、俺の羽を高速で振動させたのさ」そう言ってスピアーは自分の羽を指した。「…まさか」ピカチュウは呟いた。「そう、そのまさかだ。羽が超振動して電気をはじいたんだよ。それも細かくしてな。まあ完全に電気は殺せないから、多少の静電気は来るがな」
04/21/2014 9:35 AM ·Spoilers
…やっと理解できた。あのピカチュウの絶対避けきれない攻撃を避けたのは、あの羽が電気をはじいたのか。…やっぱり、「絶対」なんてことはないのだと改めて思った。「はあ、羽をね!テッカニンも驚きよ、全く計算外だったわ!」ピカチュウは落ち込むどころかむしろ生き生きとした顔でそう言った。
04/21/2014 9:38 AM ·Spoilers
「ふん、全く変な奴だ、自分の攻撃が効いてないのにそんな顔するとはな」全く俺も同意見だ。何かあのピカチュウにはまだ策があるのか?「…まあでっかい攻撃お見舞いされちまったお返しを俺もしねえとな」そう言うとスピアーはニヤっと笑った。「ふうん、どんなのかしら」ピカチュウもかかってこいと言わんばかりの表情で答えた。
04/21/2014 9:44 AM ·Spoilers
「お喋りはもう終わりだ、もうお前の口からは俺が攻撃した後は何も出ねえよ」そうスピアーは呟いた。「あっそ、その攻撃ってのはどんなのかしら?」ピカチュウは動じずそう言った。なんだこいつら、どっちも神経がおかしいのか。俺だったらまず逃げてる。そもそもこんな面倒事にはならないように気を付けるぞ。…そんなこと思ってるがこいつらの戦いを逃さず陰から見ている俺は何も言えない事に気が付く。我ながら恥ずかしい。
04/21/2014 9:49 AM ·Spoilers
そういえばはじめこの状況に出くわしたときに「どう出ればいいのだろう」とか思ってたくせに今はただ出ようともせず見てるだけじゃないか。よくよく考えれば一番神経がおかしいのは俺だということに気が付いた。何をやってるんだ俺… そんな馬鹿なことを考えていると「言われなくても見せてやるよ」というスピアーの声で我に帰る。ああそうだ今緊迫した場面だったな。俺何考えてんだ。
04/21/2014 9:57 AM ·Spoilers
真面目に戻って俺も緊張しながら様子を見る。そしてスピアーの方を見ると何か気砲のようなものがスピアーの口から出ていた。あれがスピアーの技か?…そう思った瞬間、スピアーの口から「シグナルビーム」と出てきた。動揺した。そしてピカチュウもそうだったようで、「なっ…シグナルビーム!?スピアーは通常覚えないはず!」と驚きの言葉が漏れる。そう発した瞬間、とんでもない威力でシグナルビームがピカチュウに発射された。
04/21/2014 10:04 AM ·Spoilers
そのシグナルビームは凄い速さで少し遠くにいるピカチュウに向かっていく。ピカチュウは歪んだ顔でまっすぐに見つめていた。スピアーの顔は「楽しくて仕様がない」という悪意のこもった笑みが出ていた。俺じゃなくても誰だってわかる。一瞬で「あのピカチュウが死ぬ」と。…俺は何がしたいんだ。ここで黙って見るだけで何もしていないじゃないか。せめて誰かに助けを呼べば良かったじゃないか。あの時だって…俺は…
04/21/2014 10:16 AM ·Spoilers
バッッチィィィィン!!!!! …あれ、何が起きたんだ?え?…ふと目を開けると、スピアーが『目玉が何処かへ行きました』みたいな顔をしてこちらを見ていた。…俺いつからここに出てきてたんだ。ちょっと待て。ほんのコンマ数秒前まで物陰に隠れてたんだが。いやいや…え、なんで?…ふと思い出して後ろを振り向くとそこには『ずっと息止めてました』みたいな顔をしたピカチュウが俺を見ていた。何がどうなってるんだ。
04/21/2014 10:21 AM ·Spoilers
謎の沈黙が続いた。といってもほんの10秒程度だが、この時の俺にとってこの10秒は体感時間で言うととても長く感じられた。…そういえばさっきのシグナルビームはどこなんだ。…あれ?ピカチュウ生きてるよな…その前に俺をはさんでスピアーが…この位置…今俺が立っている位置はピカチュウにシグナルビームが当たる場所である。……まさか、俺が止めたのか?一体何が起こったんだ。
04/21/2014 10:27 AM ·Spoilers
頭がてんやわんやになっていたその時、初めに口を開いたのは「…ちょっと…あんた、誰なの」ピカチュウだった。そして俺に質問を投げかけた。うん、全くその通りである。まさかあれだ、ほんの数十秒前まで死ぬような攻撃を浴びせられようとしていたのに気づいたら見ず知らずの奴が目の前に立っていたら。俺がピカチュウの立場だったらどうなのだろうか。
04/21/2014 10:32 AM ·Spoilers
…いや、これはあれなのか。大分前に聞いた「ヒーローが悪役から人を助ける」みたいな…それだったらあれだ、なんか決め台詞的なのがあるとか…「もう大丈夫、君は僕が守るからね!」…いやいやいやいや。どうみてもこの状況はそれじゃない。あれだ、場の空気が…というか俺自身が分かっていない時点でもうヒーローとか言えないだろ。もう通りすがりの村人Aだろ。………俺が、助けたのか…?
04/21/2014 10:38 AM ·Spoilers
少し考えがたかった。だってちょっと前まで「俺ただ見てるだけじゃないか」と自分に対して自虐的な事を思っていたのに… 「…ねえ…ちょっと…あんた聞いてる?」はっとした。そうだ。さっきピカチュウに質問をされていたんだ。…何と言えばいいのだ。…信じられないことだが…シグナルビームを消して、ピカチュウを助けたのは、どうやら俺…のようだ。…体が無意識に、勝手に、考える前に、動いていたのだ。
04/21/2014 10:41 AM ·Spoilers
「あ、ああ…そ、その…つい…」なぜか俺は煮え切らない言葉をピカチュウに返してしまっていた。馬鹿か俺は。いや、さっきもこんなこと思ったな。なら俺は大馬鹿なのだろう。我ながら呆れる。「…おい」ゾワッと、前の方から不穏な空気が出ていることに気が付いた。
04/21/2014 10:45 AM ·Spoilers
そうだ。スピアーがいた。前を見るとさっきの禍々しい表情よりもっと、とんでもなく殺気立った表情をしていた。ああ、そうか。まだ頭の整理がつかないが、俺はスピアーのシグナルビームを、自分の電撃で相殺していたんだ。そりゃあまあ…あれだろう、確実に仕留められる、と思っていたのに邪魔をされてしまったのだ。…怒らせているのは他でもない俺なのだが。
04/21/2014 10:49 AM ·Spoilers
「てめえ…何者なんだ!?俺のシグナルビームを消しただと!?そのピカチュウの仲間か!?てめえ、一人で来たと思ったら仲間も待機させてやがったのか!?」と、俺とピカチュウに対して怒鳴った。ああ、五月蝿い。俺はあんまりでかい声や音が好きじゃない。増してこんなに耳に響く声なんて、もってのほかだ。「…別にあたしこんな奴知らないわよ、本当に一人だったし」ピカチュウが口を開いた。
04/21/2014 10:53 AM ·Spoilers
「…ねえ、あんたが何者かはもうどうでもいいけど…まあ、ありがとうね」ピカチュウがそう俺に言った。ぶっきらぼうな感謝の言葉だったが、久しぶりに人と話す俺にとって、何故かその感謝が、どんなものより大きいものに感じられた。妙に照れくさかった。「…で、お尋ね者のスピアーさん、実質上2対1になってるけど、どうする?」と「さっきのお返しだ」というような笑みでスピアーを見ていた。
04/21/2014 10:58 AM ·Spoilers
スピアーは更に殺気立った目になって「…調子に乗るな、技が一回決まらなかっただけだ…そこの奴もだ…てめえらまとめて2度と起き上がれねえようにしてやる…」と息を荒げて言った。…俺も巻き込まれるのか。「…ふん、もうあんたのシグナルビームは読めたわよ。さっきはちょっと通常じゃ覚えられない技で驚いちゃったけどね」ピカチュウは鼻を鳴らしそう言った
04/21/2014 11:04 AM ·Spoilers
「あんたのシグナルビームは威力が高いから一発でも当たると致命傷になるけど、その分溜めが長いのよ。そこ突けば一発よ、さっきの「流石」っていうの前言撤回するわ。やっぱりこの程度ね」ピカチュウは淡々とそう言った。ついさっきまで殺されかけてた奴のセリフじゃないだろ…まあでも、確かにそうだ。俺がスピアーが口にシグナルビームを溜めているのに気づいてから発射するまでの時間は間があった。
04/21/2014 11:06 AM ·Spoilers
つまり、さっとそこを突けばいい。…ん、でもこれって相手に相手の欠陥を「ここが悪いですよ」って教えてるようなもんだよな…それってマズくないか?そんなこと言ったらなにかしら対策とか立てられるぞ。どうするつもりだ…
04/21/2014 11:10 AM ·Spoilers
「…ふん、そんなの俺に説明してどうするんだ。おかげでそれの対策が出来るじゃねえか」…ですよねー。マジでどうするんだ。ふっとピカチュウの方を目にやると、何か口にくわえている。何かするのか…そう思った時、突然ピカチュウがスピアーの方に突っ込んでいった。…え、えええええええええええええええ!?ちょっと待て!!そんな考えなしに突っ込んだら…
04/21/2014 11:15 AM ·Spoilers
「どうした、気でも狂ったか?」スピアーはあざ笑うかのようにそう言って、またシグナルビームを打ち込もうとしていた。いくら溜め時間が長いといってもあれじゃあもう攻撃を受ける。あのピカチュウ、一体どうしたんだ…!?真正面から本気でぶつかろうとしている。俺ももう今度こそ助けられない。思わず声を出そうとした時…ピカチュウが、スピアーの眼前に迫るといった所で、そう、『飛んだ』のだ。